2004年 Sotheby’s London オールド サン・ルイ 金彩パールガラス花瓶 C1850
本品は2004年にロンドンのサザビーズにて落札させていただいた花瓶です。
Sotheby’sのカタログには「おそらくサン・ルイ」と記載されていました。
バカラも同様ですが、19世紀の作品には刻印やサインが無いので通常見分けがつきにくい物が数多くありますが、こちらは【オールド サン・ルイ】で間違いありません。
カタログに掲載されている写真はライトを当てていますので明るく華やかに見えますが実物はフランスアンティークの華やかさが無く、やや暗めの印象です。
制作年代の1850年頃のフランスは、1789年~1799年に起きたフランス革命の混沌から未だ抜けきれず閉塞感が社会全体を覆っていました。
革命が続いた10年の間には、ルイ16世、王妃マリーアントワネットをはじめ、最も多い時には1年間で約17000もの人間が斬首刑となりました。
公開処刑が執行される広場には日々大勢の人々が集まり屋台も出たりして、狂喜乱舞しその様子を見物したようです。
日本でも有名なナポレオンが登場するのはこの時代です。
革命の大混乱から半世紀が過ぎ1848年、ヨーロッパの国々に2月革命が起こります。
1845年~48年にかけて当時、農民の主食であったジャガイモを枯らす病気が蔓延し、ヨーロッパ全土が大飢饉に陥り、パンの価格が暴騰、一部の国ではチフスも流行しました。
当時のヨーロッパはいくつもの不幸が重なり、多くの死人が出ており暗く、陰鬱な空気が覆っていました。
私は、このガラスの花瓶を観るとその頃のフランスを感じます。
淡いクランベリーに金彩で整然とした文様が描かれ、口緑にはブルーを使用して、本来ならばとても華やかでお洒落で凛々しい出来栄えの筈なのに、なぜか暗く寂しげに見えます。
反面、ガラス製品には感じにくい「深み」「濃厚さ」を強く感じます。
美術品は人間が作る以上、外的な情報、刺激を受けています。
アンティークにはその時代にしか無い物があり、それが1つの魅力となります。
19世紀末には、それまでの重苦しい空気を吹き飛ばす様に、「アール・ヌーボー」が現れます。
ガレやドームと言った優れた芸術家が、重苦しく、不自由な古典主義を踏みつけ、自然と言う神の元へ帰り、自由な発想、自由な曲線を生み出したのです。
一般の方は「高い物は良い物」と言う観念に囚われてしまいがちです。
確かに、「相場を知る」事は「買い方」として正しいと思います。
しかし、「買い方」と「観方」は別物であり、其々が独立していなければ美術品を正しく観ることが出来ません。
美術品が背負っているのは値段では無いのです。
値段は古美術商が勝手に背負わせているのです。
美術品が背負っているのは、その作品が生まれた時代の空気感です。
二度と訪れないその時代にしか存在しない空気感です。
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